性感染症

性行為とは

  • 本人だけでなく、パートナーや家族をも巻き込むので啓蒙周知をさせることがポイントになります。
  • 性活動の多様化(オーラル、アナルetc)により全身への感染波及が特徴
  • 同じ性交為によるための複数感染が目立ちます。
  • 感染しても無症状か軽いため気づきにくく広がり易い。

性感染症(STI)の主要種類(全80種)

ウイルス

  • HIV感染症(AIDS)
  • HPV感染症
  • B型肝炎性器
  • ヘルペス尖圭
  • コンジローマ
  • 陰部伝染性軟属腫

ラミジア

  • クラミジア感染症
  • 鼠経リンパ肉芽腫症

原虫

  • 膣トリコモナス症
  • アメーバ赤痢

細菌

  • 梅毒
  • 淋菌感染症
  • 軟性下疳
  • 鼠径肉芽腫

マイコプラズマ

  • マイコプラズマ感染症
  • ウレアプラズマ感染症

真菌

  • 外陰膣カンジダ症

寄生虫

  • 疥癬
  • ケジラミ症

性感染症の傾向

定点観測性感染症の年次傾向(女性)(国立感染症研究所 感染症発生動向調査より)

問題点

  • 外観の変形、慢性化する痛み、不妊、ガン、AIDSなどの発症といった後遺障害を招く恐れがあります。
  • 妊婦の感染により、胎盤、産道。母乳等を介して児への感染のリスクが高まる
  • 予防が第一で、次に適切な治療が不可欠です。

症状 

A.外陰部への影響

  1. 掻痒感:外陰膣カンジダ/疥癬/ケジラミ
  2. 潰瘍:性器ヘルペス/梅毒/軟性下疳
  3. 腫瘍:尖圭コンジローマ/扁平コンジローマ

B.膣炎・尿道炎・膀胱炎・直腸炎の訴え

  1.    梅毒の初期硬結
  2.  淋菌/性器ヘルペス/梅毒/アメーバ赤痢/膣炎による帯下増量/悪臭/灼熱感。尿道が膣に隣接するので影響を受け易く、膀胱炎も目立ちます
  3. 肛門性交による直腸炎

C.骨盤内感染症(PID)の発症

  1. クラミジア/淋菌が多い
  2.   子宮、卵管、卵巣、骨盤内に炎症が波及
  3. 下腹部の圧痛/自発痛/重症化すると、悪寒戦慄を伴う38-39℃の発熱/
  4. 不妊症/異所性妊娠を招く

D.咽頭症状

  1.  クラミジア/淋菌/梅毒が多い
  2. オーラルセックスの一般化、常態化が原因。無症状が多い。

クラミジア

世界中で最多のSTIであるのは症状が軽微であることも原因で、よって広がり易い。

A.潜伏期:1~3週間

B.診断:子宮頸管と咽頭部からのPCR法。採血により、IgA、IgGの測定。

C.治療:抗生物質(マクロライド系、ニューキノロン系、テトラサイクリン系) 広汎囲な感染を想定して最低10日間の内服が必要。妊婦に対してはマクロライド系のみ使用。

性器ヘルペス

単純ヘルペスウイルスⅠ型(口唇)とⅡ型(性器)とに分類。Ⅱ型が40%を占めます。初感染は激痛の為、病院嫌いなヒトも受診されます、微増傾向。オーラルセックスによりⅠ型とⅡ型の相互乗り入れが認められるが、お互いの場所には再発せず、住み分けがあります。多発潰瘍やkissing潰瘍(左右対称)の病変が特徴。

A.潜伏期:2~10日

B.診断:典型的所見は視診のみで容易に疑うことができますが、安易な予断は避けましょう。病原診断(直接塗抹標本での蛍光抗体法血清診断 HSVⅠ、HSVⅡ)

C.治療:無治療でも2~3週間で自然治癒しますが、疼痛からの早期離脱の為には治療が必要です。抗ウイルス(アシクロビル、バラシクロビル)と免疫を増強する為の薬と対症療法も重要です。分娩時に発症すると胎児への感染を回避するため、帝王切開の可能性もあります。

尖圭コンジローマ

 HPV(ヒトパピローマウイルス低リスク型;6型・11型・42型・43型・44型・54型)感染により外陰部に鶏冠状腫瘍を形成する良性病変です。

A.腫瘍形成まで平均3か月

B.診断:視診で十分ですが病理的に確定します。

C.治療:薬物5%イミキモドクリーム:狭い範囲に適するが治癒に時間がかかる。外科 電気焼灼、冷凍凝固、レーザー蒸散法等が即効ですが、麻酔が必要です。免疫療法(SIR-Method)薬物や外科的に原因のHPV排除ができませんが、これは期待できます。産道感染での新生児喉頭乳頭腫症の感染のリスクが高くはないが、0ではありません。予防の為のHPVワクチンやSIR-Methodによる治療が必要です。

淋菌感染症(淋病)

男性の感染は尿道炎として激烈な症状を発症しますが女性は無症状が多いです。

A.潜伏期:2~7日

B.診断:男性:尿道分泌物のグラム陽性球菌の確認

女性:咽頭と子宮頸管の拭い液をPCR検査。クラミジアとの同時検査が可能です。

C.治療:耐性菌が増えているのでセファム系抗生物質の静脈投与が主流です。

梅毒

梅毒トレポーマ(TP)の感染により発症します。最初に侵入した箇所で増殖し、その後リンパ節性、血行性に全身へ広がり、死に至ります。臨床的に4期に分類。

A.潜伏期:2~6週間

B.診断:TPの証明あるいは梅毒血清反応

C.治療:第1・第2期:PCペニシリン注射法が原則ですが内服(PCテトラサイクリン系)の場合には第1期:4週間。第2期:8週間の治療が必要です。

HIV感染症(AIDS)

 HIVは1本鎖RNAよりなるウイルス核酸をもつレトロウイルスが原因。体内侵入後免疫系細胞に感染し、時間を経過した後活性化し、免疫不全状態に陥る。この状態をAIDS後天性免疫不全症候群と呼びます。

A.潜伏期:比較的長い

B.診断:十分なインフォームドコンセント(説明を受けた後の同意)を行った上で、HIVスクリーニング検査(ELISA,PA)を行います。これで陽性が出たら精密検査(ウエスタンブロット法)で確定します。

C.治療:抗レトロウイルス療法でAIDS発症期を遅らせる。妊婦の感染は専門病院へ

外陰・膣カンジダ症

カンジダ属の真菌感染により発症します。通常カンジダは常在菌で無症状に経過します。これに何らかの誘因が加わって発症します。性行為/抗生物質の長期連用/ステロイド服用/糖尿症妊娠といった、免疫力低下が背景の場合が多いです。酒粕様、ヨーグルト様、粥状、チーズ様を呈する白色帯下で掻痒感を伴う。

A:75%以上が一度発症し、反復が多い

B.診断:膣分泌物の直接採取

C.治療:アゾール系の抗真菌薬の膣座薬を1週間程度使用

軟性下疳

有痛性の陰部潰瘍および自発痛。圧痛の強い鼠経リンパ節腫脹が特徴。HIVとの関連が言われています。

A.潜伏期:1~2日

B.診断:原因菌の検出が困難

C.治療:抗生物質(マクロライド系、ニューキノロン系)

鼠経リンパ肉芽腫

クラミジアL1、L2、L3様の感染により発症します。有痛性の鼠経・大腿リンパ節の腫を主症状として、多くは片側に発症。肛門性交による直腸炎を起こします。

A.日本では稀

B.診断:クラミジア抗原検査

C.治療:マクロライド系、ニューキノロン系抗生物質投与。治療しないでいると瘢痕形成による変形、直腸瘻を招きます。

ケジラミ症

ケジラミの陰毛に寄生することで発症。寄生部位の皮膚から吸血成長し成虫になる。また毛のある所で産卵し増殖していく。掻痒から強く出血痕をみる。

A.潜伏期:海外旅行後が多い。

B.診断:成虫の確認か毛根部の虫卵の確認(櫛や指でしごくと引っかかる)

C.治療:医療用等はなく、市販薬局での合成ピレスロイドの一つであるフェノトリンのみですが妊婦は剃毛が一番です。

疥癬

ヒゼンダニの皮膚感染で起こる。交尾後のメス成虫が外陰部の皮下にトンネル状の穴をつくり寄生する。メスはこの中で約2か月間住み続ける。オスは皮下に潜伏する。痛みを主症状とし、発赤、皮疹がみられます。

A.老人保健施設、病院、養護施設などでの集団発生が多いと報告されています。

B.診断:ヒゼンダニの検出、虫体、虫卵の鏡検

C.治療:イベルメクチン(内服)/イオウ軟膏(外用)/家族間や集団生活の中でのコントロールが大切で妊婦はイオウ軟膏の対応が良いでしょう。

マイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症

性器マイコプラズマ・ウレアプラズマは、異性間あるいは同性間の性行為によって感染する微生物です。泌尿生殖器の正常フローラではありますが、菌の濃厚感染や個体の免疫力の低下、生殖器管内の環境の変化が感染を助長します。

A:原因不明の不妊、破水、流早産、胎児発育不全の原因として最近注目されています。

B.診断:マイコプラズマ・ウレアプラズマ培地で菌同定。

C.治療:マクロライド系、テトラサイクリン系の抗生物質

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