不妊症

生殖年齢にあるカップルが挙児を希望して性生活を行いながら、2年を経過しても妊娠の成立をみない場合をいいます。

女性の不妊原因と性周期

検査

内分泌因子:ホルモン異常による原因の検索

基礎体温(BBT)の測定/経腟超音波断層撮影で卵胞発育のモニタリング/血中ホルモンの測定(LH、FSH、PRL、E2、PG/LH-RH/TRH負荷テスト)/甲状腺ホルモン(TSH、FT₃、FT₄)/インスリン抵抗性(HOMA-1R)/AMH

卵管因子+子宮因子:妊娠環境の確認

クラミジア抗体/超音波モニタリング通水/通気必要に応じてMRI/腹腔鏡/子宮鏡を外注致します。

頸管因子:性交後の精液との適合性を判断

 Hǖnerヒューナーテストにより頸管内精液の評価

免疫因子:精子や卵子に対する免疫が原因での不妊

女性;精子不動化抗体/男性;イムノビーズテスト抗透明帯抗体

男性不妊の検査

従来の精子評価に加えて、そのサポートとしての精漿の評価が重要です。原因となるfactorが何であるのかを分析してくれます。不足しているものを補いましょう。

診断

内分泌因子

  • 無排卵周期症:BBTが一相性で月経様出血があります。
  • 第1度無月経症:殆ど続発性が多い。プロゲステロンテストをして、消退出血を認める場合をいいます。

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)

経腟超音波断層撮影(US)にて両側に多数の小卵胞の存在を確認し、血中のテストステロンなどの男性ホルモンが高値あるいは血中LH基礎値が高値かつFSHが正常の3項目のすべてを満たすものを言います。

  • HPRL(高プロラクチン血症・乳汁漏出性無月経):血中プロラクチン値が20㎍/ml(検査キットで変動)を示す場合を言い、排卵障害を起こします。
  • 第2度無月経:第1度無月経の時のプロゲステロンテストで消退出血を認めない場合にエストロゲン・プロゲステロンテストを行う。これで消退出血を認める場合を言います。
  • 障害部位により卵巣性/下垂体性/視床下部性があります。
  • 黄体機能不全:排卵後、黄体からのエストロゲンとプロゲステロンの両方の分泌不全により妊娠の受け皿である子宮内膜の分泌期変化が不十分で着床障害の場合を言います。

卵管性不妊症

主に性感染症、子宮内膜症、術後の癒着などが原因で起こります。結果、卵管采癒着や卵管周囲癒着により卵子のpick up機能が損なわれたり、卵管閉塞や卵管留水腫や卵管留症により配偶子(卵子と精子)の出会が断たれます。

  • 子宮性不妊症:子宮の異常(子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、子宮形態異常)と不妊との関係は複雑で一概に判断できない部分があります。いずれも胚の着床障害が不妊の原因と思われます。
  • 卵管因子による不妊症:射精された膣内の精子は頸管粘液で満たされた頸管内を上行し、子宮腔内に達します。その時授精能を獲得しますが、そこに障害があると不妊症となります。
  • 免疫性不妊症:配偶子に対する免疫での不妊

 女性側:精子不動化試験で抗精子抗体や抗透明帯抗体の確認

 男性側:直接イムノビーズテスト

治療

排卵誘発法

  • クロミフェンクエン酸塩療法:抗エストロゲン作用により無排卵周期症で80%を占めます。第1度無月経で60%と誘発率は高くなります。
  • シクロフェミル療法:抗エストロゲン作用は無く、生理的な排卵に近い方法です。誘発率50%と報告されています。
  • ゴナトロピン療法:下垂体性排卵障害対応の方法です。卵胞発育用にFSH(rFSH)の注射を打ち、卵胞発育確認後にLH(rLH)で排卵の切っ掛けを作る注射を打つ方法です。
  • ドーパミン作動薬による高PRL血症の治療:下垂体からのPRLを抑制し排卵周期を復活させます。重症の場合Hardyの手術があります。
  • 黄体機能賦活法:不足した黄体ホルモンを補充し着床を支える方法です。
  • PCOSに対する手術療法:腹腔鏡を用いた卵巣焼灼術(LCD)で卵巣表面に小孔を開け排卵を促す方法です。

子宮性不妊症の治療

子宮筋腫、子宮内膜のポリープ治療

特に着床障害に関与するため、子宮鏡下-経頸管的レゼクトスコープ(TCR)により病変を除去します。子宮筋層内筋腫の場合、開腹または腹腔鏡下で筋腫核出術を行います。

子宮奇形

不育症の原因と成り得るのでケースバイケースですが子宮形成術を行います。

  • 中隔子宮:ジョーンズアンドジョーンズ手術
  • 双角子宮:ストラスマン手術
  • トランプキンス手術

卵管性不妊症の治療

卵管炎の場合:感受性のある抗生物質を投与し、通気・通水法を行い、HSGでの異常所見は腹腔鏡検索後、IVF-ETへ移行します。

頸管因子による不妊症の治療

頸管炎の場合:感受性のある抗生物質を投与後、エストロゲン分泌不足には排卵誘発法。それでHǖner testで改善なければAIHを検討します。

免疫性不妊症の治療

精子不動化抗体陽性不妊女性の治療法は小柴胡湯を内服し、低抗体価ではAIH。高抗体症ではIVF-ETの選択があります。

男性不妊の治療

 精漿検査の結果、酸化ストレス(8-OHdG)の高い場合はピクノジェノールやCoQ10、ビタミンE、ビタミンC等の服用が必要です。テストステロン不足の場合はテストステロンの投与。クレアチニン不足の場合はクレアチニンの補充。亜鉛不足では亜鉛の補充、スペルミン不足ではアルギニンやオルニチンの補充が有効となります。

原因不明不妊の治療

腹腔鏡の評価が治療方針のヒントを与えてくれます。又、腹腔内洗浄や子宮内膜症病変の処理も有効です。

生殖補助医療(ART)

  1. AIH 配偶者間人工授精
  2. IVF体外受精と卵細胞質内精子注入法(ICSI);弊院では実施しておりませんので御紹介となります。
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