子宮内膜症

子宮の内側は子宮内膜という粘膜でおおわれています。子宮内膜は通常、卵巣から分泌される女性ホルモンの働きによって一定の性周期ではがれて月経を起こします。この子宮内膜やそれに類似した組織が子宮内膜以外の部位に発生してくる場合をいいます。

本来良性でありますが、類腫瘍性の立場も示す奇異な病気で生殖年齢女性の約10%に発生し、増加傾向にあります。子宮内膜移植説が有力ですが化生説の立場もあります。

発生危険因子

  • 初潮が早い
  • 月経周期が短い
  • 月経持続日数が長い
  • 経妊娠数が少ない

疫学的にみますと「女性の時代」を象徴する疾患といえるでしょう。月経と密接に関係するためその時の患者様の挙動が大きく関与します。興味深いのは学生時代のクラブ歴、職種、趣味がリスクとみられるケースがあります。

体育会系ではバレーボール部、陸上部のハイジャンプ、体操部、新体操部、文科系では演劇部、ブラスバンド(サックス・トランペット・ホルン)部、合唱部又、職種ではナース、CA、教師、保育士、美容師、介護士、趣味ではブレイクダンス、スキューバーダイビング

以上のエピソードをお持ちの方にこの病気が多い印象があります。子宮内膜症の原因は子宮内膜移植説が有力ですが、月経中の彼女達の挙動がその誘因になるのかもしれません。

                          

発生部位:自然経過中

悪化例:27% 不変例:31% 改善:40%

腹膜病変:改善と悪化例がある

卵巣チョコレート嚢胞や腹膜癒着:変化少ない

症状

月経時下腹部痛/腰痛/月経痛/過多月経-貧血

月経時以外;下腹部痛/性交痛/排便痛/便秘/腹部膨満(ガス)/頻尿/不正出血/不妊症

  1. 卵巣・卵管機能障害(様々な癒着により骨盤内臓器の解剖学的位置異常を招き卵管の可動性の制限や卵管の通過性が障害されます。)
  2. 高プロラクチン血症や黄体化未破裂卵胞(LVF)による排卵障害
  3. 黄体機能不全による着床障害
  4. 免疫異常:自己免疫障害の一型との見方があります。

腹水中のサイトカインが不妊に関与。

診断/問診

  1. 90%に月経時疼痛×続発性×増悪傾向
  2. 月経時以外の性交痛は特徴的です。
  3. 50%不妊がみられます。

内診

  1. 特徴的所見は子宮後屈と動きの制限
  2. 子宮後屈とダグラス窩のしこり
  3. 動きの悪い痛みを伴う卵嚢チョコレート嚢胞

血清学的検査 CA-125の高値/Hb・Htの低下(貧血)

4超音波断層法(経腟):卵嚢チョコレート嚢胞の診断に有用

5MRI:血液の抽出に優れています

卵嚢チョコレート嚢胞の内容物は血液です。悪性腫瘍との鑑別に有用

腹腔鏡検査/子宮内腹症進行期分類(Ⅰ~Ⅳ)に必要腹腔病変を主体とする軽症内膜症はこの検査か開腹による直視下の観察によってのみ診断されます。

治療

方針の決定には年齢、これまでの分娩歴、自覚症状、進行の程度(病気の範囲と癒着の程度)が関係してきます。子宮内膜症は比較的若い人に発症し易く、不妊症を伴い易いので、治療法の主体は特有の痛みなど、自覚症状の改善とともに妊娠率を上げることにあり、病気の進行具合と挙児希望か否かという点で年齢を考慮に入れながら選択していきます。

  1. 疼痛対策:・鎮痛剤;ロキソニン,NSAIDs/低用量用ピル(OC);ヤーズ、ルナベル
  2. GnRHアゴニスト療法:持続的抗エストロゲン状態が作れます。従って治療中は更年期と同様のホルモン環境となり、エストロゲン依存性のある子宮内膜症組織は委縮します。治療後80%で症状の改善がみられますが、エストロゲン分泌の再開により再び悪化していきます。
  3. 黄体ホルモン療法:ジェノゲストは6か月間の投与で病変を縮小改善させ自覚症状を軽減しますが、不正出血が欠点です。/ミレーナは子宮に留置して使用。
  4. 経口避妊薬(OC):プロスタグランジンは子宮筋収縮による痛みの原因となる生理活性物質ですが、その合成をOCは制御します。不順や過多月経も改善します。
  5. 外科治療※:嚢胞摘出術/嚢胞内膜の吸引/嚢胞壁の焼灼~アルコール固定。子宮内膜症の17%~44%に卵巣チョコレート嚢胞が合併する。原則良性ですが、0.7%が癌化するリスクがあり、取り扱いに注意を要します。
  6. 子宮内膜症の不妊に対する治療:第一選択は腹腔鏡下術※:確定診断と治療が同時に実施できます。
  7. 抗IL-8リサイクリング抗体AMY109:内膜症の炎症と線維化改善が期待されます。
  8. MYFEMBREE(マイフェンブリー):閉経前の内膜症に伴う中等~重症の痛みを改善。

子宮腺筋症

異所性子宮内膜組織を子宮筋層内に認める場合に使う疾患名です。子宮内膜組織に直接侵入することによって発症するという説が有力。40歳代が中心で経産婦に多い。正常子宮の2倍sizeが多く、それ以上増大することは稀。子宮後壁に好発。弾性に富み、慢性出血巣等を認めます。

診断

超音波断層法/MRI/子宮筋腫との鑑別:筋腫の筋腫核に対し腺筋症は広がるように、はびこります。ただし腫瘤等もあります。

症状

月経困難症/過多月経/月経開始直前から直後にかけて激しい骨盤痛や発作性もしくは休み休み起こる事が多いです。

治療

子宮内膜症に準ずる。根治なく、再発を反復するため子宮摘出術※か決め手になります。妊娠可能にする為に腺筋症核出術※が選択なされます。マイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA):マイクロ波で子宮内膜を加熱焼灼させます。

※当院では入院施設がなく、手術は行っておりません。

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